人喰いの大鷲トリコ
スタッフ特別座談会 第四回
上田文人×田中政伸
(聞き手)丹治まさみ
人喰いの大鷲トリコ
スタッフ特別座談会 第四回
上田文人×田中政伸
(聞き手)丹治まさみ
タイトル
人喰いの大鷲トリコ Best Hits
発売日
2017年12月14日(好評発売中)
ジャンル
アクションアドベンチャー
対応フォーマット
PlayStation®4
PS4®Pro ENHANCED
4Kテレビ接続時は4K解像度に適した高精細な画質でプレイできます
価格
パッケージ版 3,900円+税
ダウンロード版 3,900円+税
CERO
B(12才以上対象)
発売:(株)ソニー・インタラクティブエンタテインメント
開発:(株)ソニー・インタラクティブエンタテインメント World Wide Studios JAPAN Studio
第21回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門 大賞受賞記念、『人喰いの大鷲トリコ』特別座談会の続きとなります。引き続き様々な質問・疑問に答えていきます。第4回目となる今回はアニメーションについての疑問からスタートです!
前回に引き続きネタバレに関する話題を含みます。
まだクリアされていないという方は、是非最後までプレイしたのち、改めて御覧ください!
(太字:丹治まさみ)
そろそろアニメーションについての話も聞いてきたいのですが、その辺りに関する質問も多いですね。要約すると、「この素晴らしいアニメーションの数々はどうやって作られたのか?」ということになりますが、モーションキャプチャーを使っていると思ってる方も多いようです。
田中 最初に言っておくと、『人喰いの大鷲トリコ』ではモーションキャプチャを使用していません。全てアニメーターによる手付けのアニメーションで頑張ってもらいました。というか、大鷲の動きはいろいろな動物の動きが混ざっていて、動作によって動きを使い分けているので、モーションキャプチャーはなかなか難しいですよね(笑)
―確かに『トリコ』って現実にはいない動物ですが、手で動きを付けるにしても何かとっかかりになるイメージみたいなものが無いと難しいと思うんですが。
上田 デザインはゲームデザインやハードの制約から決まっていったけど、動きのイメージとしてスタッフに提示したのは猫系が多かったかな。猫は世界中に愛されている動物だし、多少言うことを聞いてくれなくても許してくれるかなと(笑) それに、犬に比べて高い所が好きだから、高層ステージを踏破していく動物としては最適じゃないかと。
田中
僕は猫を飼った事は無かったので、とにかく動画をたくさん観ました。
でも、猫の動きそのままだとスケール感が出ないんですよね。僕は『ワンダと巨像』では巨像のアニメーションを担当していたんですが、巨像は硬くて鈍重だし、感情を表現しないキャラクターだったので、トリコのアニメーションとはまるで別物なんですよね。
―大きいという共通点はあるものの、硬い巨像と、しなやかな動物……ある意味真逆ですもんね。
田中 そこで、”虎”を参考にしてスケール感を出すことにしたんです。猫と虎の2つを見比べつつ、更にスケールが大きい場合を想像するんですよね。もちろん、他の動物の動きもたくさん取り入れてはいますけど。
―生命感を出すために、いろいろな動物の動きが取り入れられているんですよね。
全体を通して、何か思い入れのあるアニメーションってありますか?
上田 思い入れ、といえば、最初期のトレイラーにある、細い柱の上にいるトリコが、少年に向かって鼻を鳴らすように上下に頭を頷かせる動き。動物的にあの動作がいったい何の意味を持ってるのかまではわからなかったけど、自分が飼っていた犬が稀にやってた動きとして妙に記憶に残っていた。なので、演技ネタとして確か田中くんに作ってもらったんだよね。
田中 はい。あれはたしか最初期なので、トリコの動きを模索している時ですね。あのモーションは少年に向かって鳴いた後にする動きなんですが、甘えたいけど届かない気持ちを表現しているのかなと勝手に解釈していました。でも、正直どう表現して良いかわからなかったので、上田さんが手でジェスチャーしてくれたのを真似たんですよ(笑)
―ああ、たしかに初期のトリコはあのシーンの印象が強いです。パッケージなんかもあのイメージですよね。
田中
あと、僕の思い入れのあるアニメーションといえば、崩壊する橋で、トリコがキャッチしそこねるけど尻尾で受け止めて走り抜ける、という一連の流れですね。とにかく色々なアクションが詰まっているので、マウスを握る手が腱鞘炎になるほど手数がかかってます(笑)
あの時、尻尾に少年がついているか何度も確認するアニメーションをトリコに入れたのですが、気がついてくれている人が結構居てくれて嬉しかったですね。
上田 あと、これは思い入れとはちょっと違うんだけど、トリコが頭を突っ込んで引っかかって進めなくなるアニメーション。最初にアイデアを思い付いた時はもちろんイケると思ってたんだけど、長い制作の中で麻痺してしまって、なんとも思わなくなっていた。最近知ったんだけど、SNSなんかではこのトリコの動きについてのリアクションが大きいんだよね 。それはちょっと驚いた。自分たちはそのあたりの何気ない演技への新鮮さはすっかり失われてしまってたので。
―僕は制作後半に現場に入ったんですが、はじめてあの動きを見た時にはクスリときました。ちょっと間抜けな感じがかわいくって。実際プレイヤーの評判も良いですね。先ほど田中さんが、トリコは基本的に手でアニメーションを付けてる、という話をしてましたけど、それだけでは対応できない部分とかもありますよね?
田中
アニメーションに関する技術で言いますと、今回はプロシージャルアニメーションにチャレンジしました。プロシージャルアニメーションというのは、計算によってリアルタイムに作り出される動きのことですね。
実は『ワンダと巨像』の時も一部のキャラクターでそういった試みをしていたんですが、『人喰いの大鷲トリコ』ではハードウェアの計算能力向上に合わせて、より高度な表現が可能になったんですよね。
プログラムとアニメーション、両方の知識が必要だったので、スタッフは本当に苦労したと思います。
―リアルタイムにアニメーションを作り出す、ということですけど、プロシージャルアニメーションがわかりやすいのは、どの辺りになりますか?
田中
例えば、トリコは斜面を登ったり、段差に足を乗せたりしますけど、実はアニメーションデータは平坦な地形用の物だけが用意されているだけなんです。トリコが自ら地形を判断して足の付く位置を決めたり、体幹を補正しています。
他にはトリコの頭の動きですね。自然に振り返ったり、投げた樽をキャッチしたり、ああいった演技もプロシージャルアニメーションならではの表現ですね。
※プロシージャルアニメーションをはじめとした『人喰いの大鷲トリコ』の技術的な資料はこちらのサイトにて公開しています
上田 でも、実はプロシージャルアニメーションで苦労して実装した部分より、あまり苦労していない出来合いのモーションをそのまま再生した動きの方が、遊んでくれたプレイヤーへのインパクトが大きかったようで。なんというか意外というか複雑な心境というか…例えば水浴びモーションとか。あのあたりって”制御”という意味では苦労した部分とは違う。むしろ実装は簡単な部類。アニメーターが作成したモーションを決まったポジションで再生させるだけなので。
田中 そうですね。プロシージャルアニメーション的には自然な注視とか、破綻しないポージングを作り出す方がよっぽど大変でしたね。
―確かに、作ってるほうとしては、派手な部分より地味なところにこそ苦労があったりして。でもそれってなかなか伝わらないんですよね。
上田 とはいえ、プロシージャルアニメーションによる何気ない動きの自然さ、破綻のない動作の確固とした土台があるからこそ、ああいった要所要所のスペシャルな動きが効果的なんだろうと。
田中 あと、巨大生物が狭い所を自然に歩かせるという積み重ねが、背景を単なる背景じゃ無くしましたよね。
上田 うん、巨大生物がだだっ広い場所に居てもなかなか巨大感が出せない。
―僕が気に入ってるのは、少年が壁に近づくと手をつくじゃないですか。ああいったプロシージャルアニメーションは、さりげないけど効果絶大だなーと思っています。
決して派手ではないんだけど、リアリティを底支えしてますよね。
上田 うん、結局はゲームの世界はポリゴンで作られたハリボテの世界であって、そこを如何に本物だと感じてもらうかはキャラやオブジェクトのリアクションで演出するしかない。パントマイム理論だよね。もちろんサウンドエフェクトなんかも大事だけど。
「制作のかなり後半まで、『ワンダと巨像』のようにR1ボタンを押している間だけ掴まるという操作だった」
―逆に、これは入れ込みたかったけど技術的に、あるいは時間的に無理だったり変更があったものなどもあると思うのですが、そのあたりのお話も聞かせてもらえませんか。
上田 敵キャラクター、ヨロイの物理アニメーションかな。さっき出たプロシージャルアニメーションをもう一歩進めたもので、地面との摩擦係数を考慮した上で自立させる。もちろん疑似的ではあるんだけど。その上で、トリコや少年の接触によって、自身の重心を考慮して、動的に足を踏み出して倒れないようにモーション遷移させるという、結構なチャレンジをおこなっていた時もあった。特にPS3時代。残念ながら、スケジュール的に製品としての安定性が確保できなさそうということで泣く泣く無くした要素の一つ。
―兵士を突き飛ばして障害物につまづかせる、なんてアイデアもでてましたよね。
仕様に変更があったものとして、たとえば大鷲への指示だしの操作なんかは、僕がいるあいだだけでも二転三転しました。 最初はボタンを押すと一人称視点になって、それで指示を出すものを選択するような感じだったと記憶しています。
田中 そうですね、ゲームデザインで一番印象的な変更だったのは指示出しの仕様です。あれが今のデザインになったとき、ゲームの方向性が決まったように感じました。ゲームデザインで言えば、それ以外は本当に初期コンセプトからブレずに作ったという印象です。
上田 あとはR1ボタンでの掴まり。制作のかなり後半まで、『ワンダと巨像』のようにR1ボタンを押している間だけ掴まるという操作だった。特に開発環境をPS4に移して以降、とにかくトリコ上にいる少年の操作挙動が不安定だったこともあって……あるタイミングで「このままでは製品として理想としていた操作性能までもっていくことが難しいんじゃないか」という意見がgenDESIGN内で出たんだよね。それもあって、操作系の安定性を担保するために変更することにした。というのも、『人喰いの大鷲トリコ』の場合、『ワンダと巨像』と違って少年の腕力メーターが無いし、”掴まらない”という選択をプレイヤーが取る頻度も少ないことから、インターフェースの最適化という側面あったんだよね。
―本当にギリギリでの変更でしたよね。R1で捕まるのに慣れていたので、最初はとまどいました。
上田 発売半年前のE3で、ゲームメディアにクローズドで体験してもらったプレイアブル版では、まだR1掴まり仕様だったことから如何にぎりぎりの選択だったことだったかが理解してもらえるかと。
田中 あの時は本当にギリギリまで議論してましたよね。『ワンダと巨像』ではR1ボタンで掴まるという操作だったので、そこが変更になって残念に思われたユーザーさんもいらっしゃったかもしれませんが、結果的に操作の難度は下がりましたよね。
上田 うん、逆に『ICO』や『ワンダと巨像』をプレイしたことない人にも容易にプレイしてほしいというのもあって。
―確かに、『ICO』や『ワンダと巨像』をプレイしたことない人にとっては現状のほうがすんなり操作に入っていけるのかもしれませんね。……この辺、掘るといろいろ出てきますね(笑)
上田 あと、他にも入れ込めなかった要素でいうと、細かい映像演出になるんだけど、本当はエンディングでタイムラプスをやりたかったんだよね。トリコが村に戻ってきて、少年とともに鏡を吐き出したあと、忘れられた鏡が徐々に土に埋もれ、そこからまた徐々に露出していく様子を、数十年の時間経過としてタイムラプス風の映像で見せつつタイトルバックに繋げる予定だったんだけど……スケジュール的に入れ込むことができなかった。
―それ、リアルタイムレンダリングで表現するとなると結構なコストが掛かりそうな表現ですもんね……他にもカットされた仕様もありましたよね。たとえばトレジャー要素とか、僕はかなり気に入ってたんですけど……
上田 トレジャー要素もギリギリまで実装予定だったんだけど、他の完成度を上げるために泣く泣くカットしたんだよね。
―食べさせたアイテムの数と組み合わせによってトリコがおまけアイテムを吐き出すっていうアイデアがあったんですよね。で、その吐き出すアイテムに、ある程度ランダム性をつけようと。
上田
そうそう、いろんなものを飲み込んだり、おまけアイテムを吐き出すというのが、少年や鏡を飲み込んだり吐き出したりするトリコの生態の伏線にもなるし。
……あとこれも入れ込みたかった要素なんだけど、ネットワークを使って「トリコのAIを更新する」というアイデアは是非実現させたかった。
―それはどういったアイデアだったんですか?その辺あんまり覚えてないんですけど。
上田
たとえば、ゲームのリリース後にユーザー全体のプレイログを集計して、クリア率の低いステージがあったら、トリコが出すヒントの量を多くしたり、少年を咥えて正解まで導いてくれたり、実際のプレイ統計に合わせてAIを更新していく事で、自然なかたちでバランス調整を行うというもの。それから、トリコの性格を変えることでプレイスタイルを変化させたりとか、ほかにも色々。
トリコのAIを中心としたコンセプトのゲームだからこそ、AIをアップデートしていく事には多くの可能性があったので、実装できなかったのは残念だったね。
―なるほど、ユーザー全体の行動によってトリコが成長や変化していく、という感じですね。ゲームのコンセプトとしても正しいですし、実装されていたらどうなっていたのか気になりますね……残念ながらそうやって削られたり実装できなかった要素がある一方で、逆にギリギリで入れ込まれた要素っていうのもありますよね。
上田 そうだね、実装コストを超える効果が見込める場合とか。
―たとえば、少年が座禅を組んでヒントを思い出すシステム。僕はあれがとても好きで、座り込むことによってあの世界の住人になったような奇妙な感覚になるんですが、あの仕様はかなりギリギリに入れ込みましたよね。制作終盤の打ち合わせでアイデアが出たんですが、次の日にはもう……
田中 上田さんが座り込みのアニメーションを作ってしまった(笑) 出来てしまったからには入れ込まなきゃいけないですよね(笑)
―ほんとに、数時間で作っちゃって、上田さんニコニコしながら「作ったよ」とか言ってて。
上田 そうだっけ?(笑) あれは確か、回想ボイスでゲーム進行のヒントを出してるけど、あれを見逃してしまったプレイヤーに向けてヒントの過去ログが閲覧できる必要があるな、ってことに気づいて…
―たとえばポーズ画面のメニューとかでヒントログを見れるような仕様だったら実装はそれほど難しくはないんだろうけど……
上田 もっと自然にプレイヤーに伝えることができないかな、ということで生まれたアイデアだったね。あと、ゲーム画面のスナップショットを撮る際に何か面白い画になるポーズやモーションが入れたいなーと。操作してない時のアイドリングモーションで居眠りしたり特定モーションをするゲームキャラクターはいるけど、プレイヤーの任意の操作でそういったことができるのも楽しいし、新しいかなーと。
「より自然に感じられるように、リアリティある風のアルゴリズムを提案して実装してもらいました」
―さっきの話とつながる部分もあるんですけど、どこを切り取っても絵になる様な風景を作り上げていくのは相当大変だったと思うのですが、なにかこだわりとか苦労話などありますか?
田中 風の表現に関してはこだわりましたね。風って通常、単純なノイズを与えて終わりにしちゃうことが多いんですが、より自然に感じられるように、リアリティある風のアルゴリズムを提案して実装してもらいました。
―そんな所までやっていたんですか? どちらかというとプログラマの領域のような気がするんですけど……
田中
アルゴリズムの設計自体をプログラマさんに頼んだ場合、満足する出来になるまで確認と修正を繰り返すことになります。それだと時間がかかってしまったり、本来やりたかった事がブレてきてしまったりするので、出来る所はこちらでアルゴリズム設計をして「この計算で実装をお願いします」とする事もあります。
漠然とした提案ではなく、設計も含め可能な限り実装に近づけて提案することで、より地に足のついた形になるように心がけていますね。
上田 そうだね。提案と実装の距離が遠いと、結果的に「コンセプトアートはすごいけど、実際のゲームではそこまで達成できていない」みたいなことが往々にしてある。ジェンデザインではこういったことがなるべく起きないように、アルゴリズム設計にかかわらず、コンセプトアートやキャラクターデザインなどふくめできる限り最終アウトプットに近い環境で、技術的な提案をするようにしている。
―そこを突き詰めた結果、結果的にアルゴリズム設計までしちゃったわけですね(笑)
―アルゴリズム設計をgenDESIGNで行ったというお話でしたが、具体的にはどのような提案だったんですか?
田中
オブジェクトの揺れ方だけを頑張っても風の感じは出せませんので、風側と受け手側(羽や草木等)とで分けて、両面からアプローチする事にしました。
例えば、田園風景とかで風が波の様に伝わっていくのを見たことあると思うんですが、あれを再現する為に、空間に擬似的な波を発生させるという手法で風を表現しました。
受け手については、単純にやるとペタンと倒れるだけになってしまうので、風向きとオブジェクト角度から、風の強さを大きく受ける姿勢と、逆に受け流す姿勢とを分けて調整出来るようにしたんです。
―かなり複雑な……というかこだわりを感じます。そういったアルゴリズムをお渡しして、実装してもらった流れなんですね。
田中 実装するのは大変だったと思いますが、genDESIGN内で考えをまとめてからお渡しできたので、何度もやりとりを繰り返すよりは良かったと思います。
―風を感じるような自然物と、朽ちた人工物が共存しているような世界ですよね。かなり膨大な作業量になりそうですけど、どのような制作アプローチをされたんでしょう?。
上田 背景にはパーツとレイアウトの手法をいち早く取り入れたんだよね。今では当たり前のワークフローだけど。
―ええと、それは岩1個であったり、木の板1枚であったりという細かなパーツがあって、それを組み合わせていくことで大きな背景を組み立てる、ということですよね?
上田 そう。このワークフローのお陰で、現実感のある背景密度を実現できて、かつレベルデザインの変更に素早く対応出来た。
田中
重要なパーツはgenDESIGNでデザインして、それをベースにJAPAN Studioさんに広げてもらったりレイアウトしてもらいました。それと、パーツデザインの幾つかをx10studioさんに外注しました。
また、ライティング含めたアートディレクションもgenDESIGNでおこなったので、クオリティラインの引き上げであったり、全体を通しての統一感が生まれたと思います。
―なるほど、積み木のような作り方をすることで密度と制作時間を圧縮出来たということなんですかね。
田中 あと、単純にレイアウトをしてしまうと、どうしても綺麗に整然と並んでしまうので「経年劣化を表現する為に全体を歪ませる処理をしてはどうか」と上田から提案がありまして、JAPAN Studioさんに実装してもらいました。PS3時代にすでに実装されていたのですが、一度綺麗に並べたものを、わざと変形させるんですよね。最終的には細かな調整に粘り強く対応してくれて完成させることができました。
上田 単純に歪ませるだけではなくて、例えば通路の床だと、通路の端はさほど変化はないけど、通路の中心部は人の往来で踏みしめられて緩やかに凹んでいる、とか。そういった手動調整もツールを使って比較的簡単におこなえる。天井や壁や柱も然り。このあたりのアルゴリズムはさほど複雑ではないので、可能ならそれらも自動計算でやりたかったけど。
―そこまで自動になると便利でしょうね。スライダーひとつで建物の劣化具合がコントロールできたりしたら、面白そうです。
ゲーム背景はそういったアプローチで作っていったというのはよくわかったんですけど、カットシーンなんかは結構ワンオフで作り込まれてましたね。
上田 ワンオフの部分はそれほど多くはなかったけどね。カットシーンでいうと、実は大鷲の巣の周辺、崖上から見える地平線まで続く景色はちゃんと作ったんだけど、ラストのトリコの飛び立つカットはフォグの設定ミスで何も見えなくなってる……これはもったいないんで画像のせておきたいなぁ。